こんにちは。株式会社ハイヤールー代表の葛岡(@kkosukeee)です。これから毎週、失敗しないエンジニア採用についてオウンドメディアに記事を投稿していきます。記念すべき第一弾は母集団形成編その①で、5本立ての母集団形成編を理解する上で大事なエンジニアレベルの定義に焦点をおいて説明し、適切な母集団形成を行う上で必要なステップをご紹介します。
筆者が所属していたメルカリやDeNAなどといった日本を代表するテック企業で得られた経験と、約100社ほどの中小企業や上場企業などからヒアリングした結果をもとに作成されたノウハウなので必ずどこか読者に参考になる箇所があると思います。
エンジニア採用に関わる人事の方、これからエンジニア組織を作っていく経営者の方などに参考となる記事になっていますので是非ご一読下さい。
エンジニアレベルの定義
自社のエンジニアグレードと他社のグレードが完全に一致することはありません。ただ国内で求められているエンジニアのレベルはある程度一般化できると思います。例えば国外だけで見てみると以下のようにGoogleやFacebookなどのわかりやすい層を例にしていますが、ある程度会社を横断しても給与やスキルが同じことがわかります。
上記の図を補足しますと、GoogleでのL5はシニアレベルでTechLeadなどが任されるようなポジションであり、Facebookの同等のポジションはE5となり、年収は大体$200,000(日本円換算すると約2300万円)ということがわかります。その他Googleでの一番下のグレードは新卒などに当たるL3となりFacebookではE3、こちらも年収感では大体$130,000(日本円換算で約1500万円)ということがわかります。
これは海外だけでなく、国内でもある程度当てはまることであり、一般化したレベル感を事前に定義することで後の説明が楽になり、共通認識を持つことが可能になるため、これから続く記事では以下の定義を元にそれぞれの層にささるためにはどのようなアクションを起こせばいいのかなどを説明します。
経験年数 | 年収感 | 採用競合例 | |
---|---|---|---|
L1 | 1年未満 | ~360万 | 実力より頭数を重視する受託企業等 |
L2 | 2年未満 | 360万~480万 | 数名規模のスタートアップ等 |
L3 | 3年未満 | 480万~600万 | IPO目前の名前を聞くとすぐわかる会社等 |
L4 | 5年未満 | 600万~1000万 | 国内メガベンチャー、大手企業等 |
L5 | 5年以上 | 1000万~1500万 | グローバルで活躍する企業等 |
表1:国内のエンジニア採用市場のレベル感
上記の表は弊社が他社の事例や数多くのヒアリングを通して定義したエンジニアレベルの定義であり、実際に給与テーブルとほぼ一致しているとフィードバックをいただくこともあり、ある程度信頼度は高いはずです。レベルの定義は下からL1 ~ L5となっており、以下がそれぞれのレベル感の定義の一部を抜粋したものとなっています。これからのセクションと記事は以下のエンジニアレベルを元に話をすすめます(自社で別途グレードがある場合は上記の表とマッピングすると理解しやすいです)。
L1 (Level 1)
未経験、もしくはプログラミングを始めたばかりの人。オンラインスクールや独学でプログラミングを習い、一通り試しにものを作った経験がある。
実務の経験があまりないため、GitHubを使ったチーム開発の経験やクラウドベンダー(AWS, GCPなど)を使用し実用性のあるシステムを作った経験は無いが、転職活動のためのポートフォリオなどを充実させることが目的の開発が多い。
L2 (Level 2)
プログラミングの勉強を一通り終え、エンジニアとして就職した後に少しだけ業務にも慣れて給与アップやさらなるスキルアップのために転職市場に出てくるエンジニア層。どんなタスクも自走できるわけではないが、チームの中で業務をこなすことは問題なくできる。
実務でコードを書いたり、AWSやGCPなどのインフラの設定などの経験があり、ちゃんとタスクを分解させた状態でタスクを投げるとそれなりに形にはなる。GitHubやJIRAなどのチーム開発のツールも多少使ったことはあるため、企業に入ってゼロから育成という心配はない。
L3 (Level 3)
ソフトウェアエンジニアとしてスタートアップなどで経験を積み、ある程度自走できる力がある。勉強会などで登壇するレベルでメガベンチャーなどでもプレイヤーとして通用するレベルだが、多くがメガベンチャー手前の企業に属することが多い。
実務でそれなりに経験を積んでおり、新しいプロジェクトを発足するときも開発を主導できるレベルだが、システム設計(幅広い技術を知った上での選定など)・工数の見積もりなどといったところにはまだ少し力が足りないというスキル感。
L4 (Level 4)
ソフトウェアエンジニアとしてチームをリードしてプロジェクトを先導できる人材。このレベルからテックリードやエンジニアリングマネージャー(マネージャーは本人の希望や年齢なども関わってくる)等といった役職を任せられるような人材。手を動かしても優秀であり、システムの設計や仕様などをまとめプロジェクトをリードする即戦力人材。
L4あたりから作業する時間はもちろんのこと、仕様のすり合わせ、システム設計の話など、手を動かすだけが仕事ではなくなる。技術選定や運用まで見据えたシステムの設計など幅広い知識が問われ、メガベンチャー(ディー・エヌ・エー、サイバーエージェント、ZOZO)などで活躍するエンジニアがこの層にあたる。
L5 (Level 5)
手を動かすことはあまりなく、TLM(Typically Live in Meeting)な人材。エンジニアの人事評価や組織体制などを考えたりする、エンジニアリングマネージャーやMoM(Manager of Manager)やVPoEなどがここに当たる。出身企業は様々だがメガベンチャーやスタートアップでCTOをやっていた人などが多い印象。
プレイヤーだと名前を聞いたことある人で数々のチームを束ねる人がいるが、ほとんどマネージャークラスやVPoE候補の人などが多い。システム設計はもちろんだが、エンジニアのことを理解しており、強い組織・チームを編成ができる人材。
自社のエンジニアレベルを把握
自社のエンジニアレベルの現状を把握することで、今後どの層を採用すべきかなどが明確になります。なぜなら一部のケースを除いて、殆どの企業が優秀なエンジニアを採用したいと望んでいる中、自社のエンジニアレベルがL2であるにも関わらず、いきなりL5の採用は極めて困難だからです。地に足のついた採用マーケティングをすると母集団は徐々に大きくなります。
自社のエンジニアレベルを把握する上で一番分かりやすいのは、採用競合がどこかを把握することです。例えば採用競合で良くDeNAやYahooなど、メガベンチャーと競合することが多いのであればおそらく自社のエンジニアレベルはL3またはL4だということが分かります。二番目に分かりやすいのは自社のエンジニアの前職のエンジニアレベル感から求めることです。例えば自社のエンジニアにはメガベンチャー出身が多数在籍している、そういったケースではおそらくエンジニアレベルはL3またはL4でしょう。
求めているエンジニアレベルの定義
続いて自社のエンジニアレベルが把握できれば、求めているエンジニアのレベル感を定義します。ここで気をつけてほしいのが、自社のエンジニアのレベル感と求めているエンジニアのレベル感に大きく乖離があることです。実際に過去に100社近くエンジニア採用の課題をヒアリングしてきましたが、母集団形成が全くうまくいかない企業に共通している点はこの乖離から生まれます。
求めているエンジニアレベルの定義は、自社のエンジニアの定義ができれば給与テーブルなどと照らし合わせてなんとなく想像しやすいかと思います。より高いレベルのエンジニアを求めたい気持ちはわかりますが、地に足のついたエンジニアをターゲットにしないと、求人倍率7倍から9倍と言われているエンジニア採用の世界では絶対にうまくいきません。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございました。本記事ではこれから連載されるテーマである、失敗しないエンジニア採用に必要な前提知識となる『エンジニアレベル』の定義をしました。今後の記事では各セグメントにどのようにリーチできるか、どのような媒体を使うべきかなどを説明しますが、それらの記事を十分に理解するためにも、エンジニアレベルの定義が非常に重要となります。
次回の記事では各レベルでどの様に採用チャネルを選定すべきかを媒体の特徴と共に説明をします。実際にメルカリやDeNAなどに所属した経験と約100社以上にヒアリングした結果をもとに確立されたフレームワークなので必ず参考になるところがあると思います。次回の記事も楽しみにして下さい。
※このシリーズは弊社がコーディング試験サービスを立ち上げ時に行った100社弱を対象に行ったヒアリングの結果をもとに社内共有目的で作成された採用ノウハウ集をもとにしています。エンジニアに採用に悩みを持たれている企業の担当者様が読者におられましたら、是非お気軽に弊社までご連絡ください。なにか力になれることがあるかもしれません。